4、希望

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 親友の両親が一人泣いている俺を見て、悲しむような顔をした。  そうだ、俺よりも両親の方がよっぽど悲しいはずだ。  親友の両親の顔を見て手紙を封の中に入れ……渡そうとした。  その時、裏の隅の方に一言。 「あの場所で会おう」  その文字を見た時、俺は小さな頃の記憶が鮮明によみがえっていく。  道、場所、そして二人の場所……俺はいてもたってもいられなくなった。  気がつくと隠れ家へ向かって走っていた。  親友の両親が何か言いそうになっていたがそれよりもただ……最後の言葉にすがっていたのかも知れない。 「あの場所で会おう」その言葉は二人だけの隠れ家へ行くときに決めた言葉だ。  隠れ家、昔は遠かった距離も今ではそれほど遠くなかった。  入り口を開け、子供の時は大きかった隠れ家も小さく見える。  その時、隠れ家の真ん中に黄ばんだ古い手紙があった。  そこには……まるで子供が書いたような文字で俺の名前があった。  最後に隠れ家で遊んだ時にはこんな手紙はなかった。  その後、親友の手によって置かれたのだと確信した。  手紙を見る。  手紙には震えた文字で「ごめんなさい」……そう書かれていた。  だがその6文字だけで色々なことが走馬灯のようにが蘇る。  気がつくと自分でも自分の顔がぐしゃぐしゃになっていることがわかるほど泣いていた。  小一時間ほど泣いていたのか。  やがてあふれた涙も止まりその手紙を握っていた。  親友の家へ行き、あの時のことを謝ろう。  たとえ生きている姿は見れなくても……。  いまさら遅いかもしれないが……。  それでも知らせなくてはならない。  ぼろぼろに黄ばんだ手紙を握り、歩く。  親友の家へ着き、インターホンを押した。  出てきた親友の両親に「仏壇の前で謝りたい」と言うとよくわからない顔をしていたが通してくれた。  仏壇の前で手を合わせた。  生まれ変わったらまた……一緒に遊ぼう。  叶うならあの時のことを謝りたい。  心からそう願った。  静かに目を閉じ、「生まれ変わったらまた遊ぼう」と呟いた。
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