3.巣立ち

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3.巣立ち

4、巣立ち  過去の記憶は薄れ、忘れていく。  毎日泣いていたのが、日々が経つにつれ泣かなくなった。  友達もでき、仲間も増えた。  やがて生活に馴染み、笑うことも増えていく。  小学生を卒業する頃にはもう涙を流すことはなくなっていた。  相変わらず親は仕事で忙しく、毎日一人で生活する日々。  いつの頃からか自分の事は俺と呼んでいた。  年齢があがっていくと、友達の家に夜遅くまで遊ぶことも多くなった。  中学に入る頃には次の日に家に帰ることも度々あった。  それでも親は何も言わない、いや……遅く帰っていることを知らないのだ。  そんな日々が続くと自分だけで強くなっていく……が逆に心はとても弱くなった。  それでも平常心を保っていたのは友人が居たことが救いだった。  中学卒業が近くなると、友人達は受験勉強と言う理由で遊ばなくなった。  やがて一人の時間が増え、今までのことを考えはじめる。  転校前のあの記憶がよみがえる。  自分のことを僕と言っていた時代。  謝れなかったこと、それを遅くなったが今からでも謝ろう……。  昔居た場所は分かるが今持っているお金では相手に会えるかどうかはわからなかった。
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