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「あ、鷹峰さんっ、」
一人、夕志の妄想で悶絶していたところに、赤の着物を着た、従姉妹の鈴がちょうど廊下の向こうから現れた。
「ちょうどいいところに来て下さったわ!」
何か困った様子の鈴に、鷹峰は何か面倒なことでも頼まれるのかと、眉をひそめた。
(それよりも今は、夕志を…)
「あの、私、本家に来るの久しぶりで、御手洗いの場所、一つしかわからないのよ。
そこにあるのじゃなくて、他の御手洗いって、どこにあるかしら?」
大したことではなかったので内心安堵しながら、鷹峰は答えた。
「近いのは、──この先の廊下の突き当たりの、すぐ右側にある。」
「ありがとう。
そこの御手洗い、鍵が閉まってて入れなくて困ってたのよ。」
そう言って、教えた方向に歩いていく鈴。
(鍵が閉まっている──だと?)
その瞬間、鷹峰は確信した。
(そこにいるんだな!)
御手洗いの場所を聞くのは、鷲と共に部屋をもってこいの口実じゃないか!
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