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間に合ってくれよ──!
祈りながら、すぐ近くの御手洗いにいけば、鈴の言う通り、鍵がかかっている。
個室の扉が鍵かかっているのなら、それはつまり使用中の意味だろうが。
個室のドアではなくて、そのトイレの部屋に入るドアが閉まっているのは、明らかにおかしい。
別段封鎖する意味もないし、例えば工事などで封鎖する予定も聞いていない。
(思いっきりいくか。)
息を吸い込んで、一気に扉に蹴りをかます。
──バリバリッ!!
嫌な音もしたが、なんとか開いた木製の扉。
その向こうには──
「‥……た、鷹峰!」
目を潤ませて、肩を剥き出しにした夕志が、向こう側の壁に押しやられた格好で、突然登場した鷹峰の名前を呟いた。
夕志のすぐそばには、こちらを見て驚いた様子の鷲。
「兄さん!?」
「『兄さん!?』じゃねぇ、
鷲、お前、俺のものに手を出して、済むとでも思ってるのか?」
「兄さんの!?
いや、あの、そんなっ、…」
「まぁいい、
今回のは夕志が悪い。」
「夕志?ゆう……あっ!ユウってそっから……」
一人納得したように頷く鷲。
どうやら鷹峰には弱いらしい。
もの凄く落ち着きがない。
一方の夕志は、二人の獣に追い詰められているような絵図等に半ば、放心状態だった。
ピンクな雰囲気でワザとらしく鷲を誘い出したまではいいものの、男など襲うはずもないと思い、種明かししたら、まさかの展開。
『俺はバイだよ、男もイけるくちだからさ。ねぇ、抱かせて。』
追い詰められ、絶望に打ちひしがれているところに、鷹峰の登場。
鷹峰のお陰で助かったのはいうまでもない。
「お前、鷲がバイってことまでは知らなかったんだな、」
「……え、えぇ、」
「俺もそうだけどな、」
「……へぇ、そうなんで……って、えっ!?鷹峰も!?」
平然とカミングアウトする友に、夕志の思考はパンク状態だ。
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