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「いや、俺なんかより兄さんの方がす…」
「とにかく、誰かさんのお陰でしっかり俺は今、兄弟で女を取り合ってる構図にしたてあげられてるんだけど?
どう責任とってもらおうか。」
鷲の言葉を遮るように、鷹峰がそう言うと、そのままの格好で立ち上がり、夕志も頭を働かせて反論する。
「それは、鷹峰、あなたが元々私にこんな格好させるのが悪いんですから、責任を追求されても知りません!」
「ほぉ、似合ってるからいいじゃないか」
「そういう問題ではなくて、
‥…そもそも、私はそれを狙ってやってのけたのですから、存分に困り果てなさい、」
「チッ、……まぁ、いい。これで全て済む話だ。」
そう言うと、鷹峰は夕志に近づいたかと思うと、夕志を横抱きにした。
夕志はそれなりに背が高い方だったが、鷹峰には、さして問題ないらしい。
「ちょっ、……何をっ、」
「静かにしろ、」
「静かにって…‥」
「命令だ、刃向かうなよ」
そう言われると黙るしかない夕志は、悔しさとこの格好の惨めさに、唇を噛んだ。
(ますます女みたいじゃないか)
「あぁあぁ、唇なんか噛んだら跡になるよ?ユウちゃん。……じゃなかった、夕志さん。」
慌てて言い直す鷲。
どうやらもう、鷹峰には逆らえないらしく、夕志に手を出す気はないらしい。
鷹峰が無言の圧力で鷲を従わせていた。
鷹峰はそのまま、元居た大部屋の方へと向かう。
夕志は抱き上げられているという、慣れない感覚に、ただただ耐えるので精一杯だ。
「鷲、開けてくれ」
「はいよ、」
両手が塞がっている鷹峰がそう頼めば、ゆっくりと鷲が障子を開けた。
ざわついていた室内が、急に静まる。
鷹峰はその状況に満足しながら、恥ずかしいのか、肩を震わせながら自分の胸元に顔を押し付けた格好の夕志を一目見ると、
そのまま、さっきまで自分が座っていた位置まで歩いていった。
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