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夕志をその場に降ろすと、自分の横に立たせた。
夕志はといえば、あまりの羞恥に顔を真っ赤にさせ、鷹峰と反対の方向を向いていた。
「本日は、──みなさん、新年早々集まっていただき、ほんとうにありがく思います。
毎年のことながら、…‥」
静まったのをいいことに、毎年話している、挨拶をし始める鷹峰。
本当は、夕志が着た時に、すぐ挨拶を始めようと思っていたのだが。
ようやく、当主らしく挨拶をし始めることができた。
夕志は座ってしまおうかと思ったが、すぐさま腰にまわされた鷹峰の腕によって、阻止されてしまった。
(一体何を考えているんだ…)
夕志は困り果てた顔つきで、自分の足元を見つめた。
しかし、次の言葉に、夕志は驚くことになる。
「──さて、私事ではありますが、皆さんもお察しの通り、私は、こちらの方と結婚を考えております。
本日はその披露も兼ねて、連れて参りました。
弟の鷲共々、お騒がせして申し訳ございません。」
(はっ………!?)
開いた口が塞がらないとは、このことだろう。
あまりの衝撃に、言葉も出ない。
ただただ唖然として、夕志は鷹峰を見上げた。
(──け、結婚??)
あまりに現実離れした内容に、夕志の頭はついに、思考を停止した。
周りから一斉に上がる拍手。
「やっぱりっ!」という声が、四方八方から聞こえてくる。
「え、……?」
そして、今まで前を見ていた鷹峰が、ようやく夕志と目を合わせたかと思えば、頭を押さえて、軽く触れるキスをしてくる。
「は、……?」
放心状態の夕志を見て、鷹峰は笑うと、また前に向き直った。
「私が彼女と結婚する際には、追って、式の招待状を送らさせていただきます。
尚、彼女に関しては、その一切を秘密にします。
ただ、この、絵月家当主の妻として、認識して頂きたい。」
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