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「鷹峰っ、!」
抗議したいことがありすぎる!
夕志は鷹峰を睨んだ。
「なんだ?」
しかし、それに構わずしれっとした顔で、夕志に言葉を返す鷹峰。
「なっ、……」
「ほら、挨拶しろ」
「意味がわかりませんっ、何であなたとっ、……」
慌てて鷹峰に小声で抗議すれば、低い声で鷹峰は夕志の耳元で笑ってみせた。
「俺の面目を潰す気か?」
「……っ、一言言うだけですよ?
“取りあえず”。
後でしっかり説明していただきますからっ!」
眉間に皺を寄せてそう言うと、夕志は仕方なくその場に膝をついて座る。
鷹峰の立場や評判を落とすわけにはいかない。
──とはいえ、
そうして渋々真っ直ぐ正面を見ると、大勢の顔がしっかりと見えた。
(適当に…適当に…、──って、何を言えばいいんだ?)
当然ながら、経験したことのない現状に、顔には表れないが夕志は内心テンパっていた。
(可愛いなぁ、……)
一方の鷹峰は、夕志の耳の裏が赤くなっているのを見て、微笑む。
ワザと放置させるあたり、鷹峰も性格が悪い。
「“まだ、未確定な部分が多い中の”いきなりの発表に、私自身、驚いて、いるのですが…‥
よろしくお願い、…致します。」
夕志らしくない辿々しい口調。
たまらず頭を深く下げると、大勢の拍手が部屋中に満ちた。
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