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適当な部屋に入るやいなや、戸をぴしりと閉めると、鷹峰は誰よりも先に口を開いた。
夕志は羞恥からか、先ほどから何も話そうとしない。
「お察しの通り、叔父である、あなただけにはちゃんと知って貰おうと思いましてね。
ワザと叔父さんだけに夕志を“俺の秘書”として紹介したんです。」
「だが鷹峰、私は当主のお前が、こんな馬鹿げたことを許されるとは思わないのだが?
勿論、身にしみてわかっているだろう?
無理な結婚はいざこざを生むだけだ。無理に男同士でするなんて…」
「あぁ勿論。
両親の二の舞にはならない。」
その言葉に夕志はハッとした。
鷹峰の両親は、今はもう、早くして他界しているが、その結婚は鷹峰の父親が、無理矢理決行したとか。
鷹峰の母親は、結婚する気など、少しもなかったようで。
お陰で鷹峰の母親は、鷹峰を産むと、当主の妻としての役目は終えたとして、事実上、別居。
鷹峰はひとり、母親に育てられたが、7歳になると、絵月家本家に住まわざるを得なくなり、そこで初めて父親と対面。
母親は自分の人生を狂わせた父親とは、一緒に住みたくはないと主張するも、鷹峰のことがあって渋々、本家に同居。
そうしてやっと、家族が全員揃ったという大変な家族。
でもその一年後に鷲が産まれたから、きっと、両親の仲はよくはなったのだろう。
父親と同じように、無理矢理結婚だとか宣言するあたり、血を引いている証拠だろうか。
(いや、もっとタチが悪い!)
忘れてはいないだろうか、夕志は紛れもない、れっきとした“男”だ。
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