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「そうは言っても鷹峰、
君塚君は“男”だぞ?
お前の親父さんのした“無理”とは全然違う。
私が言ってるのはそこだ。」
「さっき言った通り、夕志に関するその全てを秘密にする。
だから、その点はバレない。
現に、誰一人、夕志が男だとわからなかった。」
「バレないバレる云々じゃない。
それ以前に、男同士で籍など入れられないだろう?」
「外国で、手続きすればいい。」
「外国っ……そんなこと、簡単にはできないだろうっ」
「叔父さん、俺を誰だと思っているんだ。」
「…………はぁー、」
“お手上げだ”という風に、両手を上げると、友和は深く息を吐いた。
「叔父さんに、このことをしっかり話したのは、単に、俺の親父みたいなものだからってわけじゃない。」
確かに、他界した鷹峰の母親の弟である友和は、鷹峰にとって生きている中で一番血のつながりが近い親族。
親父がわり と言っても過言ではないだろう。
「叔父さんだけは、騙したくないんだ。」
鷹峰はそう言って、友和の目をしっかりと見た。
少しの沈黙の後、苦笑しながら友和は鷹峰から視線をはずす。
「そう言って、親戚絡みのあれこれややこしい部分を私に任せるつもりか。」
「さぁ?
まぁ、いずれはそうなるだろう
事情を知っているのが、叔父さんだけだから。」
そう言って、鷹峰がすっとぼけると、叔父さんは“仕方ない”と呟いた。
(これでも姉さんの子だ。)
「鷹峰、お前の父親はとんでもない子どもを世に残していったな」
「いや、子どもは父親と母親があってこそですよ?」
鷹峰がそう言い返すと、途端に二人して静かに笑った。
が、一方の夕志は…‥
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