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苛立ちを増す彼だが、その顔立ちは実に綺麗だ。
女たちは、今の関係だからこそ、下手に話し掛けたりしないが、
これがもし、ただの職場の同僚だったりするならば、絶対にあの手この手で近づいていっただろう。
艶のあるパーマがかった黒髪
シャープな輪郭
細めのノンフレーム眼鏡から覗く、意志の強そうな深い黒の目
桃色の薄い唇
適度に白い綺麗な肌
また、着せられている着物から覗く鎖骨も艶めかしい。
眉間に皺をよせているその表情も、なんだか見惚れてしまう。
どこから見ても、“デキる男”だ。
「夕志様、こちらへ。」
「……」
女に促されるままに、無言で従う彼──夕志の姿は、どこか、気品のある女王のようなオーラがある。
「これは?」
「薄く、化粧もさせていただきます」
「化粧っ…だと?」
女の着物を着せられた挙げ句、化粧までしなければならないなんて…‥!
未経験の出来事に、夕志は、怒りを通り越して、どこか、ヤケになった。
(あっちがそのつもりなら、とことんやってやる…)
「おいっ、」
「は、はいっ!」
口調がどんどん荒れていく夕志に、半ば怯えたように返事をする女。
「私の部屋からコンタクトレンズを持ってきてくれ、」
「っ、畏まりました」
「で、君、」
「はいっ」
「君は私の香水を」
「畏まりました…」
「で、君たちはこの顔をどうしてもいいから、鷹峰好みの女に仕立てろ、」
そう言うと、夕志は眼鏡を化粧台に置いた。
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