社長と秘書

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高層ビルが建ち並ぶ街の、一角にある、黒っぽい立派なビル。 宴会の次の日、そのビルの38階に、鷹峰と夕志の姿があった。 ──pipipi pipipi.. 「社長、電話です。」 「誰から?」 「A社代表取り締まり役の、富川様からです。」 「あー富川か…」 そう言って、夕志は内線を繋ごうと手元のボタンを押そうとしたが、鷹峰は手でこっちにくるよう合図した。 仕方なく、手元の子機に繋いで、それを鷹峰の居座る机の方へと持って行けば、微笑む鷹峰。 「歩きがぎこちないな、」 「それはっ、」 顔を真っ赤にした夕志を見て、たまらず笑う鷹峰。 なんでこんな時に、そんなことをっ…‥しかも平然とっ、 そう思いながらも、しっかりと子機を手渡せば、今度は夕志の腕を引っ張り、その唇に短くキスをする鷹峰。 すかさず抗議しようと口を開くも、鷹峰は電話の相手と話をし始めた。 (─────っ!!) 昨日は、自力で何とかマンションまで帰り着いた夕志。 歩きがぎこちないのと、肌にこれでもかと付いたキスマーク。 今朝、いつものようにぴしっとスーツを着れば、どうにかマークは隠れたが。 後ろの違和感からくるこの歩きは、直らなかった。
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