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友和に限らず、絵月家当主に近づく女──夕志には沢山の視線が突き刺さるように集まっていた。
夕志はそれに小さくため息をつくと、鷹峰の背後に周り、耳元でワザと低い声で一言呟く。
「私にこの格好をさせたことを、今に後悔させてあげます。」
鷹峰はそのあまりに艶のある声に、思わず、夕志の方を振り向く。
そもそも鷹峰は大手企業のトップに立つ男。
そんな社長の秘書が夕志なわけだが、それがどうしてこうして名前を呼び捨てするような仲なのかと言えば、
もとより、夕志は鷹峰の同級生であり一番の友だからである。
普通の友人関係と違うのは、基本的に、鷹峰の指示には従わなければならないところだろうか。
特に、こういった絵月家絡みの行事ものは鷹峰に逆らうことは即ち、絵月家に刃向かうことに等しい。
(絵月家といえば、ここらじゃ一番の地主だし、由緒正しい伝統ある家柄だ。)
その代わり、会社において夕志は実際、鷹峰に唯一近づける者としてある程度の権力を保持しているほか、
実際なにもかもを管理している夕志は、それなりに鷹峰に唯一命令を下せる。
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