第三章 1000万人の証言者

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「そりゃもう!さすがに全部を探検してる場合じゃないですけど、仕事で来てますから…あっ、仕事で思い出しました。中さん、もうすぐ本番ですよね?お話があるんですけど…ああどうしよっかなぁ、終わってからの方がよろしいでしょうか?今話をすると、本番に集中出来ないんじゃないかと思うんですが…」 「別に今でも結構ですよ」 香子は志津里の言葉を遮った。 「そうですか、ありがとうございます」 「私が断っても話すつもりでしょ?だからこんなタイミングでやって来たのよ。違う?」 「まあ一応断った方が良いかと思いまして…」 志津里は心の内を探られた事に少し照れながら言った。 「あの、出来れば2人でお話出来ればと思っているんですが…いかかですか?」 香子は時計に目をやる。9時25分を回ったところだった。 「良いですよ。せっかくだからスタジオ行きましょうか?」 「スタジオですか?ニューストレインの?」 目を開いて驚く志津里に香子は少し笑った。 「そうですよ。少し早いけど、ゆっくり話しながら行って、スタジオで見学なさったらいいわ」 「見学ですか?いやぁ嬉しいなぁ。バラエティーと違ってニュース番組は見学ってなかなかないからなぁ」 志津里の言葉からは驚きと感動が伝わった。 「じゃあ行きましょうか?」 志津里は頷いて2人はアナウンスルームを後にした。
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