第三章 1000万人の証言者

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      18 2人は長い廊下を並んで歩いている。人通りが少ないせいか、2人の足音だけが響いていた。 「志津里さんは今までどんな事件を担当なさったの?」 「この仕事も長いし、いろいろありますよ」 「じゃあ私が報道してるのもあるかもしれないわね」 「事件解決したらその夜はニューストレイン見てますよ。なんだか誉められたみたいな気がして」 志津里の言葉に香子はクスッと笑った。 「じゃあ最近は?」 「まあ9月に復帰したばかりなんですが…」 「そうなの?」 「ちょっと体調崩しちゃって。だから最近扱った事件は現職警官が友人を殺した事件とか、ドルフィンズの事件ですね」 「ドルフィンズもあなたなの?どっちもトップニュースじゃない、すごいのね」 「誉めないでくださいよ。仕事ですから」 志津里は大振りで謙遜する。 「今までで一番大変だった事件は?」 「なんかインタビュー受けてるみたいだなぁ。キャスターの職業病ですね」 「いかに巧く引き出すかがポイントよ」 香子は冗談ぽく言うと志津里も笑顔で応える。 「大変なのは毎回大変です。犯人も必死ですから。まあ答えにはならないかもしれませんが、一番興味があるのはいつも今担当している事件です」
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