第三章 1000万人の証言者

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志津里の言葉に香子は笑った。 「あなたこの仕事を良くわかっていないようね。いくらてんやわんやな状態でも与えられた仕事はみんなバラバラなの。そりゃポジションによって重要さは変わってくるけど」 「どういう事です?」 「例えば、ADの子が風邪で休むのと私が風邪で休むのだったら意味が違うでしょ?」 「そうですね。中さんが休んだらエラいことだ」 志津里は軽く手を叩きながら納得した。 「でも、誰かが欠けても番組は成立しない。1人いなかったらもう大問題よ」 「確かに言えますね、やっぱり犯行は無理か…」 考えこむ志津里に香子は少し優越感を覚えた。 そして2人は短い廊下を抜けてスタジオに入った。 「うわぁ、広いなぁ。でもテレビとおんなじだ!すごいなぁ!」 志津里は感動していた。 「じゃあ座りましょうか?」 「座るってどこにですか?」 きょとんとする志津里に香子はセットを指差した。 「あそこですか!?いやぁ、良いんですか?」 「まだ本番まで15分はあるから大丈夫よ。行きましょ」 そして香子はセットに向かっていつものメインキャスター席に座った。 「志津里さん!何してるの?」 香子に促された志津里は照れながら、セットに近づいて香子の横に立った。
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