第三章 1000万人の証言者

17/19
前へ
/79ページ
次へ
香子に促された志津里は照れながら、セットに近づいて香子の横に立った。 「ほら、そっち座って。コメンテーターの席だから来るまで大丈夫よ」 「そうですか?それならお言葉に甘えて…」 志津里はぎこちなく座った。 「うわぁ、すごいなぁ。この緊張感は尋常じゃないですね」 香子はいろんな物に感動する志津里を見ていると飽きなかった。 「これは良い経験だなぁ。娘に自慢してやろう。カメラの下にあるあの画面は何ですか?」 テンションの上がった志津里は子供の様に言う。 「あれはリードっていって、キャスターが話題を言い始める時の枕詞が書いてあるの」 「ああ!次は何々の何々です。みたいな!」 「何々ばっかりね」 香子は笑った。 「あれを話す時はみんな前を見ているでしょ?あれはカメラの下のリードを読んでるの」 「なるほど!やっぱり裏側を知るのは楽しいです。いろんな物があるんだなぁ」 「じゃあ話の続きをしましょうか」 はしゃぐ志津里に香子は話題を戻した。 「ああ、はい。ニューストレインの人間には一応動機はあるんですが、堅いアリバイもある…ただCM中に抜け出す事は出来ないんですか?」 粘る志津里に香子は笑った。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

285人が本棚に入れています
本棚に追加