第四章 イヤな女

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      19 「お疲れ様です!」 本番終了後、スタジオには大きな安心感が空気となって広がる。それは香子や多くのスタッフの気持ちが1つの塊となっているようであった。 香子は緊張の糸をほどいて原稿を整理していると、ふと頭を過った。 降板の話をしたのはまさか… 香子は相沢由佳の方を見た。由佳は澄ました表情で原稿をまとめて立ち上がった。 「相沢、ちょっと」 「お疲れさまです。何ですか?」 由佳は軽く笑顔を見せて香子の方を向く。 由佳の不敵な笑みは相変わらず考えを読ませない。 香子が由佳を好きになれない要因だった。 「あなた、刑事さんに何か話した?」 「確かに刑事さんには会いましたよ。かわいいネクタイした刑事さんでした」 やっぱり志津里に会っていたと香子の嫌な予感が的中した。 「でも、何かって何ですか?」 「彼はニューストレインの関係者が本田を殺したと思っているらしいの。あなた、私の話をしたんじゃない?」 「まさか…香子さんが犯人だとか言ってませんよ」 「そんな事言ってるんじゃないの。私の降板話が持ち上がったって事話したかって言ってるの」
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