第四章 イヤな女

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由佳の言葉は的を得ていた。もっとも、スタッフを混乱させて香子を失脚させる事に由佳自身の狙いがあるのだろう。 「自己保身はみっともないですよ、香子さん」 「あなたの行為には悪意を感じるわ…」 「どう思われようと結構です。言葉通りに受け取ってもらえないなら仕方ありません。私だって香子さんが本田さんを殺したなんて思っちゃいません。ただ、やましい事が無ければ何も起こらないと思いますよ」 確かに由佳も香子が殺したとは思ってはいないだろう。しかし、由佳の目的は警察の疑いを香子に向けるだけで十分だ…計算高い由佳のやり方に香子は陰で拳を握った。 「失礼します。お疲れ様でした」 そう言うと由佳は再び立ち上がり、スタジオの出口へと歩き出す。 「そこまでして私の立場が欲しいの?」 由佳を呼び止める香子の声はスタジオに響いた。 振り向いた由佳は、「さぁ」と言わんばかりに首を傾げてスタジオを後にした。 香子は座ったまま由佳のいない出入口を睨んだ。 密かに後釜を狙っていた由佳は事件をきっかけに一気に攻め込んできた。少し前なら小娘のすることにいちいち相手はしないのだが、着実に力をつけた由佳はそれとは違っていたのである…殺人によって消し去った香子の心に、再び脅威が蘇った。
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