第四章 イヤな女

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「警部さんも大変ですね」 「別に今さらいいんだけどさ。でも付き合ってる段階ならこんなイベントすっぽかすのは死活問題でしょ?フラれちゃうよ」 「でも自分には捜査の方が大切ですから…捜査でイベントが出来ないのを理解されないようじゃそこまでの人だったってだけです」 自身の信念を言い切った佐川に、志津里はそのままの向きで一瞬微笑んだ。 「あれ?」 志津里は奥の棚を探りながらフッと言った。 「どうしたんです?」 佐川が志津里の元に駆け寄る。 「このステレオ…埃がちょっと途切れてる。何で?」 「さぁ…」 「使ったのかなぁ?」 「まあこの部屋の物も使う事もあるみたいですからねぇ」 「まあそうだけど…」 志津里はどこか引っ掛かっている様な表情を見せた。 「プラグは抜けてるけど、電源はつくのかなぁ」 「差してみましょうか?」 「ありがと、お願い」 佐川はかがんで棚の裏にあるコンセントにプラグを差し込んだ。そして志津里がスイッチを押す。 「あっ、点いた」 ステレオは例によって各ボタンがチカチカと光る。志津里はボタンを押してカセットデッキやCDトレイを開いた。
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