第四章 イヤな女

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      22 「警部どこ行くんです?」 佐川は廊下を歩く志津里に追い付いた。 「あのさぁ今何時?」 「11時6分です」 佐川は素早く答える。 志津里が何かを掴んだ事を佐川も感じ、背筋を伸ばした。 「それなら丁度いいや。ニューストレインのところ行ってきてさ、事件の夜のニューストレインのテープ借りてきてよ」 「テープですか?」 「うん。そういうのあるはずだから」 「いいんですか?」 「捜査だって言えば大丈夫だから」 「わかりました」 会話もテンポ良く進む。噛み合わない2人が漸くまとまり始めた。 「僕は先に視聴覚室を貸してもらってくるよ。まあ小さいとこでいいからさぁ」 「わかりました。でもどうして急に?」 「何かわかるかもしれないからね。アリバイは崩れたけど、決め手が無い」 「決め手ってなんです?志津里さんは犯人の目星がついてるんですか?」 志津里の考えに少し置いていかれている佐川は疑問をぶつけた。 「うん、ついてるよ。知りたい?」 「ええ、もちろん」 「中香子だよ」 「ええ!?」 佐川は反射的に驚いた。 「そんな!?どうして?事件のあった時は本番中で…」 「それが崩れたの。じゃあよろしくね」 佐川が呆然と立ち尽くす中、志津里はマイペースに立ち去った。
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