第四章 イヤな女

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      23 今夜も無事に本番を終えた香子は調整室を訪れた。 スタッフは口々に香子へ労いの言葉をかける。 「番組も今年は明日で終わりですね」 「そうね。いろいろあったけど、今年も何とか終われそうね」 香子も椅子に腰かけて話す。ゆったりとした空気で香子はため息を漏らす。 「本田さんの事は残念でしたが…」 「まあね、でも落ち込んでられないわ。どんな事情があっても信念を持って報道する…それが彼の信条よ」 香子にはスタッフが未だに気持ちが入らないのもわかっていた。言わば舵取りを失った船なのだ。それも超大型船、平常心を保つのは難しい。 しかし、座礁はしなさそうね…コーヒーを口にした香子はスタッフを見てつくづく感じた。 「あの、すみません」 香子と話すスタッフに若い男が声をかけた。 見慣れない男で、どこか緊張気味だった。 「私は警視庁の佐川といいますが、ご協力をいただきたく思いまして。ニューストレインの映像をお貸しいただけないでしょうか?」 スタッフに声をかけた佐川はふと香子と目が合った。佐川の緊張感が一気に高まっていくのがわかった。 しかし、それを会釈で何となくごまかしまたスタッフに話しかける。
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