最終章 伝えられた真実

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      27 本番を終えたニューストレインのスタジオは寂しさが支配していた。 明かりはついているが、人気が無い。佐川はスタジオに入らず、セットのデスクには志津里が座っていただけであった。 「来ていただいてありがとうございます」 「そこは私の席よ」 香子の言葉に志津里は笑う。 「それに、そんなネクタイじゃテレビには出られないわ。視聴者がネクタイに気が散ってニュースに集中出来ないもの」 「そうですか、まあ恥ずかしくてニュースは読めませんよ…あっ、やっぱり早口言葉って得意なんですか?うちは私も娘も苦手なんですけど」 「言いましょうか?」 至って普通の会話ながら香子は何かを探ろうと毅然とした態度を保っていた。 「まあそれはまた後で…中さん、年明けのニューストレインのトップニュースはこれです。<ニューストレインプロデューサー殺人事件、犯人逮捕>どうです?いいでしょ」 志津里は遂に核心に触れてきた。 香子はぐっと構える。 「確かにそうね。それはどこまで現実味があるの?」 「どこまで…まあ最後までちゃんと考えてます」 「どういうこと?」 「怒らないで聞いて下さい。本田さんはやっぱり殺されました。犯人は中さんです」
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