最終章 伝えられた真実

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志津里はデスクから立ち上がり、香子に言った。 「怒らないでって言う方が無理ね。前も言った通り私には出来ないってあなたも納得したじゃない。なのに私が犯人ってどういう考えがあっての事かしら?」 「そうなんです。あなたは犯行があった時にテレビに映ってた。随分悩みましたよ。そんな確実なアリバイはなかなかありませんからね。全国に証言者って…私もこの仕事は長年やってますがこんな事件は初めてで」 そう言いながらも志津里の表情はこないだとは違って余裕があった。 香子にとってはそれがとても脅威に感じた。 「ただ、1つ言えるのは事件が起きた時と本田さんが死んだ時は必ずしも一致はしないという事です」 「というと?」 「死体を発見した坂東さん、彼は犯行の瞬間を見た訳じゃなくて銃声を聞いただけなんです。つまり、あの部屋で本田さんが殺されたのはもっと前、銃声は後から聞こえた。どうやって犯人が出ていったのかなんて考える必要が無かったんです。銃声がした時には犯人なんて最初からいなかったんですから。これがあの事件の真相です」 「なるほど、でも結論を急ぐには事足りないわ」 香子も余裕を見せる。それぐらいじゃどうにもならない事はわかっていた。
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