間違いは誰にでもある。ということ。

6/22
前へ
/22ページ
次へ
「あの・・・うるさいんだけど・・・」 泣き声も怒声も震えた声も消えた。 一瞬で静かになったからキーンと頭を刺すような音が聞こえる。 「おにいちゃん!おにいちゃん!」 「あぁ・・・ああぁ・・・」 「ほらな、ほら私の言った通りだ」 ミカが笑顔で飛び跳ねている。 母さんはボロボロと泣き崩れてしまった。 そんな母さんを支えるように父さんがメガネの位置を直した。 「おにいちゃん、何日も寝てたんだよ?もう朝が何回もきてね。わたしが起こしても起きてくれなかったんだよ・・・?」 ミカの目からボロボロと涙が落ちる。 「おにいちゃんを起こすのは、ミカの役目だから何回も起こしたのに起きてくれなくて・・・。それなのに、勝手に起きて・・・」 「俺は、基本的に自分で起きている。だろ?」 ミカの頭を撫でてやろうとした。 ・・・。 手が動かない! 「あんた!痛いところは!?苦しいところは!?」 母さんが安心半分不安半分で聴いてきた。 俺は、混乱している。 「痛くはない。苦しくもない」 答えると、ほっとした空気が流れた。 「感覚がないんだ・・・。手も足も動かせない」 空気が凍り付いた。 周りの風景から病院の個室なのだろう。 まるで葬式のようになってしまった。 ミカ、先生呼んでくる! ミカが走り出した。 「まさか、後遺症・・・」 母さんが病室の奥に居た中年に向けて拳を振り上げた。 「この人を殴っても、意味が無い」 中年の男性は、顔面蒼白で立ち尽くしている。 トラックの運転手なんだろうな。 俺の身体は、どうなっちまったんだ・・・。 消灯後、俺は独りで泣いた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加