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「あの・・・うるさいんだけど・・・」
泣き声も怒声も震えた声も消えた。
一瞬で静かになったからキーンと頭を刺すような音が聞こえる。
「おにいちゃん!おにいちゃん!」
「あぁ・・・ああぁ・・・」
「ほらな、ほら私の言った通りだ」
ミカが笑顔で飛び跳ねている。
母さんはボロボロと泣き崩れてしまった。
そんな母さんを支えるように父さんがメガネの位置を直した。
「おにいちゃん、何日も寝てたんだよ?もう朝が何回もきてね。わたしが起こしても起きてくれなかったんだよ・・・?」
ミカの目からボロボロと涙が落ちる。
「おにいちゃんを起こすのは、ミカの役目だから何回も起こしたのに起きてくれなくて・・・。それなのに、勝手に起きて・・・」
「俺は、基本的に自分で起きている。だろ?」
ミカの頭を撫でてやろうとした。
・・・。
手が動かない!
「あんた!痛いところは!?苦しいところは!?」
母さんが安心半分不安半分で聴いてきた。
俺は、混乱している。
「痛くはない。苦しくもない」
答えると、ほっとした空気が流れた。
「感覚がないんだ・・・。手も足も動かせない」
空気が凍り付いた。
周りの風景から病院の個室なのだろう。
まるで葬式のようになってしまった。
ミカ、先生呼んでくる!
ミカが走り出した。
「まさか、後遺症・・・」
母さんが病室の奥に居た中年に向けて拳を振り上げた。
「この人を殴っても、意味が無い」
中年の男性は、顔面蒼白で立ち尽くしている。
トラックの運転手なんだろうな。
俺の身体は、どうなっちまったんだ・・・。
消灯後、俺は独りで泣いた。
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