一章 意味のないこと

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廊下へ出て、各教室から聴こえる賑やかな話し声と、スピーカーからのカタコト電波ソングをBGMに、僕は下足箱まで歩いた。途中先生とすれ違うことはなくラッキーだった。大した幸運ではないけれど。 靴に履き替えて旧校舎へ向かう。グラウンドには早弁をしたと思われる男子生徒が、数十人でサッカーをしていた。多分、苦手なタイプの集団だ。今はどうでも良いけれど。 歩くこと数十秒。旧校舎の入口に仁王立ちする。「立ち入り禁止」と書かれたバリケードが置かれている。立ち入りを禁ずるには随分ガードの緩い障害で、軽くそれをまたいだ。 全く躊躇いのない自分に、ふと「おや」と思った。立ち入り禁止区域に立ち入る程の行動力なんて備わっていたのか。後々の、見つかった時のリスクとかを考えて止めるというのが「僕」らしいのに。 まぁ、良いか。 乗りかかった船だ。 最後まで行ってしまおう。 僕は一人、旧校舎へと潜入した。
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