一章 意味のないこと

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「……」 期待は裏切られるものだ。宝くじぐらいの、小さい期待だけだったのは幸いだった。 何も、誰もいない。 まっさらな黒板。 40の古びた机と椅子。 教壇。教卓。クリーナー。 埃を被っているということ以外は、僕のいる教室と何ら変わらない姿だった。面白味の欠片もないとはこのこと。実につまらない。ハイリスクを犯した割に、ローのリターンさえない。僕の、何の新鮮味のない人生に、スパイスでも加わるかと思っていたのに。 下らないことをした。 らしくないことはするものじゃない。 所詮は、わき役に過ぎないのだから。 ユウキが待っている。 早く帰ろう。僕の今後の評価にヒビが入っては困る。 廊下へと一歩、足を踏み出す。 その瞬間だった。 「みーつけた」 僕は「鬼」に見つかった。
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