一章 意味のないこと

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「イヤだなぁ、私は幽霊なんかじゃないよ?」 人を小馬鹿にするような物言いだった。そして鼻で笑っている。この屈辱感。好きではない。 「私の影を見て、旧校舎に来たのが3人目ってこと」 それは僕にも想像のつくような妥当すぎる答え。しかし、いくら妥当と言えども疑問が湧く回答だった。間欠泉の如く、と言っては大袈裟だけれど。 彼女の言い方だと、意図的に影を見せていたということになる。この一つの事実だけで、芋づる式に疑問が引っ張り出される。謎が謎を呼ぶとはこのこと。 とりあえず、小さめのお芋を一つ。 「前の二人との関係は?」 「……」 小さなお芋が、彼女から笑みを消し去った。地雷を踏んでしまったのか? 僕の探知機は一切反応を示さなかったというのに。 彼女は大きく口を開けて、一気に閉じた。カツンと歯のぶつかる音がして「イー」と口を真横に広げた。無感情の笑顔。歯並びは綺麗だった。 「二人には、頭のネジが飛んでる位に思われてるかな」 百本ぐらい。 彼女は付け加えた。 確かに。 と悪態をつくのは止めた。
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