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自分で頭のネジが飛んでいる自覚がある、これは厄介なのか否か。ネジはともかくとして普通ではない。彼女の役柄は一般生徒Aを超えている。嫉妬を覚えそうな程の、主人公気質を感じる。羨ましくないけれど。
「そういえば、自己紹介がまだだったね」
名前で呼べないと不便でしょう、と彼女。教卓の横に立って転校生のような初々しさをもって御辞儀。
「我が名はマナ。この世に生まれ落ちて17年になる」
転校生は、世界を滅ぼすのに躍起になっている悪役のような口調だった。そしてさらっと一つ年上であることを暴露した。この「なり」で先輩でしたか。思わず丁寧語になる。
「君は?」
前へ、と彼女は教卓の横へと促した。この場では自己紹介は転校生スタイルという決まりらしい。
彼女は空いていた席に着く。
拍手が、寂しげに反響する。
頭を下げて一言。
「マコトです。16です」
機転の利かない、味気ない自己紹介。彼女は「地味だね」と言った。
「こういうの、慣れてないですから」
いや、慣れないから苦手なのかな。そう訂正する前に彼女から横槍が入る。
「敬語、止めて」
年なんて関係ないから。それは器が大きいというよりかは、ただ単に敬語を使われることに嫌悪しているだけのようだった。
「申し訳ありません」
初めて悪態をついた。
「ひねくれてるね」
否定はしなかった。
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