一章 意味のないこと

16/22
前へ
/235ページ
次へ
自分で頭のネジが飛んでいる自覚がある、これは厄介なのか否か。ネジはともかくとして普通ではない。彼女の役柄は一般生徒Aを超えている。嫉妬を覚えそうな程の、主人公気質を感じる。羨ましくないけれど。 「そういえば、自己紹介がまだだったね」 名前で呼べないと不便でしょう、と彼女。教卓の横に立って転校生のような初々しさをもって御辞儀。 「我が名はマナ。この世に生まれ落ちて17年になる」 転校生は、世界を滅ぼすのに躍起になっている悪役のような口調だった。そしてさらっと一つ年上であることを暴露した。この「なり」で先輩でしたか。思わず丁寧語になる。 「君は?」 前へ、と彼女は教卓の横へと促した。この場では自己紹介は転校生スタイルという決まりらしい。 彼女は空いていた席に着く。 拍手が、寂しげに反響する。 頭を下げて一言。 「マコトです。16です」 機転の利かない、味気ない自己紹介。彼女は「地味だね」と言った。 「こういうの、慣れてないですから」 いや、慣れないから苦手なのかな。そう訂正する前に彼女から横槍が入る。 「敬語、止めて」 年なんて関係ないから。それは器が大きいというよりかは、ただ単に敬語を使われることに嫌悪しているだけのようだった。 「申し訳ありません」 初めて悪態をついた。 「ひねくれてるね」 否定はしなかった。
/235ページ

最初のコメントを投稿しよう!

92人が本棚に入れています
本棚に追加