一章 意味のないこと

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「で、聞いてくれよ。一昨日の晩御飯がカレーでさ」 「うん」 言葉のやり取りはあった。しかしそれが、心のキャッチボールというものにまで及んでいたのかというと、そうではない。僕が悪いのだけれど。 「友達」の作り方なんてものを意識し、算段を練っている時点で、もう違うのだ。それは。 小学生の時は、何も考えていなかった。気が付けば周りに誰かいて、気が付けば誰かと仲良くなっていた。 中学、高校と位が上がるごとに、そんなことも無くなった。頭が良くなると言えば、語弊は在るのかもしれないが、そういうことだ。 複雑になった僕たち人間は、利益とか関係性とか周囲の印象とか、色んなことに気をまわすようになった。僕だけかも知れないけれど。 それで人間関係というものが息苦しくなった。だけど「友達」という役割を為す誰かがいないと困ってしまう。学生生活において。先の体育の時間で二人組を組まされる時とか。無論、ユウキと組んだのだけど。一人だけ、先生と組んでいる人がいた。ああはなりたくなかった。僕は最低かも知れない。
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