一章 意味のないこと

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「それでさ、昨日の晩御飯もカレーで、二日連続だったんだよ」 ユウキは、少なくとも僕のように思慮深いわけではないように見えた。馬鹿にしているわけじゃない。ただ、羨ましいだけ。 「でも二日目のカレー、よく煮込んだカレーは美味しいじゃないか?」 「確かにな、美味かったよ。けど新鮮味がない分、プラマイゼロだって」 はは、と僕は笑った。 この日常は新鮮味だけが失われていく。マイナスだけ。そんなことを悟った風に考えていた。 チャイムが鳴る。「んじゃ、また後で」と僕は黒板と向き合った。直ぐに目を逸らしたけれど。
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