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人が親切に接したのに、それをいきなり笑われて、友矢があまりいい気分はしないのは、言うまでもない。
「いや。《倒した》ってのじゃ語弊がある…………《殺した》、だろ?」
「なっ!」
「なに驚いてやがる?有人機であれ、無人機であれ…………俺たちが《殺した》のに変わりはない。…………違うか?」
初めて見せた笑顔━━━━残忍な笑みを浮かべたまま、耕助は続ける。
「俺はな…………嫌いなんだよ。《正義》の名の下に行われる《戦い》が。そんな免罪符が許される世界も嫌いだ」
居心地が悪くなり、そう告げて、耕助は立ち上がり、そのまま何処かへ去ろうとする。
「なら……君自身は?」
哀愁感漂う背中を向け、この場を後にしようとする耕助に、友矢は疑問を投げかけた。
すると耕助は、
「この世の中で一番嫌いだ。誰よりも《生きたい》って考えてるからな」
哀しく笑いながら、自嘲気味に答えた。
(それでは…………虚しいだけじゃないか)
人知れずに握り拳を作り、力を込める友矢。
このままではいけない、と。
確かに感じながら。
そんなやり取りを眺めていた翔とシデンは、
「難しい奴だな……」
「耕助は今まで《暗い部分》を見過ぎた。…………心が押し潰されちまったんですよ」
「誰にだってそれくらいはあるさ」
「問題は、その後……と」
案外、第三者の方が本質を理解しているものである。
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