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う~む。どうしたらいいのだろうか。
今、俺の手を掴んで離さない緑川は
果たして記憶を失っている俺の手を握っているのか。
それとも、記憶を失う前の俺を、記憶を失った俺と重ねて手を握っているのか。
「赤木しげるさん」
「何?」
「俺、こういう時どんな顔すれば良いのか分からない」
「……ふん」
鼻で笑われた。
赤木さん。
せめて『笑えば……いいと思うよ』って言ってくれ。
困ったなぁ。
今の俺が緑川との過去の思い出を持っているなら有頂天になっているだろうけど、
残念ながら俺は記憶を失う前までの緑川との思い出がない。
今の俺はどんな表情で緑川を見てやれば良いのだろうか?
「……」
「どうしたの赤木さん?」
なにやら赤木さんが物思いにふけっている様子だったので尋ねてみる。
ちなみに緑川はまだ俺の手を掴んだままだ。
「あんたが嬉しいなら笑えばいいんじゃない。悲しいなら泣けば、泣けないなら困った表情でも良い。
とりあえず、今のあなたの表情は……見るに堪えない……」
見るに堪えない?
妙な事を言う人だな。
ポーカーフェイスの神様と言われた佐藤君だよ。そんな表情するわけないじゃないか。
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