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「はぁ……」
赤木さんは大きなため息をついて、胸ポケットから折りたたみ式の手鏡を開いて鏡面を俺に向けて突き出してきた。
「……なるほど」
成程、これは驚いた。
鏡の中に映し出される男の表情は、眉尻を下げ、無理やり口もとだけで笑顔を作っているせいか、酷く歪な表情に見えた。
「……他人の心配ばっかりしてないで、少しは自分の心配でもしたら?そんな表情してる奴に心配される事ほど辛い事はないと思うわよ?」
相手が自分の好きな人だったら特にね。と最後に付け足す赤木さん。
その言葉は俺に向けられたものだったが、俺は何も言えずただ立っている事しか出来なかった。
「……あー、そういえば今日は近くのスーパーで弁当が半額になる日だったわ。早くいかないと半額弁当買えなくなっちゃうから私は帰るねー」
白々しいセリフ吐いた赤木さん、俺と緑川を置いて公園から立ち去ろうとする。
「あ、そうだ!退院して学校に登校してきたらきちんと学級日誌書いてもらうからね!」
赤木さんは公園から出る直前で、理解不能な発言と共に大きく手を振り、それから一度も振り返る事なく走って去っていってしまった。
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