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赤木さんが走り去っていった後を呆然と見ていると、不意に洋服の袖を引っ張られた。
「……」
「どうした?」
こちらを見上げる蛍。
俺は目を合わせられずに俯く。
「好治」
緑川の口から、苗字ではなく名前を呼ばれる。
「それは俺だけど、俺じゃないだろ……」
その名前は俺の名前だが、緑川蛍が呼ぶ俺は別人だ。
「よしはる」
「違う」
「ヨシハル」
「違う」
「よ・し・は・る」
「一言ずつ区切っても同じだ」
「佐藤好治」
何度違うと言っても、俺の名前を呼ぶことをやめない緑川。
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