32003人が本棚に入れています
本棚に追加
何度も、何度も、何度も何度も俺の名前を呼び続ける緑川。
「なぁ……俺、どうすればいい?」
俺は耐え切れなくなって、遂に緑川に尋ねる。
緑川は記憶を失った俺に何を望むのだろうか?
それが気になった。
できれば教えて欲しかった。
それが甘えだって事はわかってる。
でも、今の俺は緑川に甘えることしかできない。
自分では答えが見つけられない。
「……笑えば」
「笑えばいいと思うよ。なんて言ったらスカート捲るぞ」
折角人がシリアスモードになっているのにこの子ったら……
「好治は……」
「何だ?」
「今が辛い?」
「全身全霊ハッピーだぜ!って言ったら盛大な嘘になるな」
「じゃあ、記憶……取り戻したかと?」
「できれば……」
できれば、目の前の少女が悲しまないようにしたいと思う。
記憶を失う前の俺が、この少女にどのような感情を抱いていたかは知らないが、今の俺はこの少女の事を大事にしたいと思っている。
記憶が戻る事で、目の前の少女が喜ぶのであれば……俺は全力で記憶を取り戻したい。
「いや……絶対に取り戻したい。かな?」
言葉にする事で少し心が軽くなった。
「緑川……俺が記憶を取り戻したらどうする?」
「……とりあえず一発殴る」
あぅ……
ぎゅっ!と握りこぶしを作る緑川から後ずさる俺。
意外と武闘派ですか?
いいえケフィアです。
最初のコメントを投稿しよう!