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雪が降る中、ユキは部屋を飛び出しその猫に駆け寄り、そっと手を差しのべる…ついさっき自分の愛猫が行方不明だと言うことを、電話口に聞いたばかり…
もし今目の前にいる猫が自分の愛猫なら…
聖なる夜にこれ程の奇跡はない…
でも…もしそれが本当ならその道のりがどれだけ険しかったか…痛いくらい分かる。
そんなことより目の前の猫はあまりに傷つき過ぎている。
その小さな生命が何より心配。
寒さの中、あつくなったユキの目頭はもうすでに溢れる涙をとめられずにいた。
そのかわいらしい真っ白な猫には、その純白を邪魔しないように白い首輪を付けた。
汚れたその猫の体も首輪も、純白とは言えない。
…チリンチリン…
この音色は懐かしく聞き覚えがある…。
「…スノー…?」
すでに確信はあったけど、首輪に付けられている元は銀のプレートに刻まれた文字をそっと確認してみる…。
‘ S N O W ’
「スノー。」
ユキは傷ついたスノーの体をこれ以上傷つけないように優しく優しく抱き締めた。
…チリンチリン…
雪夜に鈴の音は祝福の音色のように優しく響いていた。
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