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あしきだになきはわりなき世の中によきをとられてわれいかにせむ
「水無瀬、試しにこの和歌を読み上げてみろ」
「あしきだに、なきはわりなき、世の中に、よきをとられて、われいかにせむ……なんだかスラスラ言えますね」
「五・七・五・七・七、それぞれの最初の言葉がa・o母音で始まってるだろ。これが頭韻的リズムを作っている。それに上の句にi母音が多いから、脚韻的リズムも感じることが出来る」
「おー。とても悪人の詠んだものとは思えません」
「ちなみに他の技法は以下の通りだ」
・対比
あしき(悪しき)⇔よき(善き)
・縁語
わり(割り)-よき(斧)
・掛詞
わり(割り・理)、よき(斧・善き)
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