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「何?どしたのー?」
切りかけた通信機をもう一度持ち直して杞詠は問い掛ける。
呼び止めたはいいものの、あまり言うことを考えていなかったようで通信機の人物は少し躊躇っているようだった。
それを察知した杞詠は口角を軽く吊り上げながらも先程と変わらないような口調で再び通信機に声をかけた。
「どーしたの、【ウイルス】?」
『ッ、うるっせ!』
通信機の人物のコードで問い掛けると珍しく慌てたようにガタンと音がした。
もしかしてびっくりして椅子からズリ落ちたのかな、と杞詠は思って少し喉を鳴らして笑った。
『あのな!次乗車してくる奴───』
その時、ガラリとドアを開けて少女が入ってきた。
「りょーかい。」
「……どうかした?」
ガチャン、と通信機を切った杞詠は再び運転に集中しながらちらりと少女を見る。
「別になんでもないよ。」
「そ。」
ふわり、と杞詠の横に立ち外を見る少女は、そっと呟く。
「真が、乗ってきた。」
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