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結局、葵はもう陽介と付き合う事はないと言った。
それから、授業が始まり数学の時間になっても陽介とは、ほとんど顔を合わすことはなくなった。
学園内で、すれ違っても挨拶程度。
用事が無ければ話すことはない、本当に普通の生徒と先生の関係に戻ってしまった。
だが、陽介は違った。
葵の口から別れた理由をきちんと聞きたかった。
何度かそれを聞き出そうとしたが、惚けられたりして終わっている。
『なぁ~…どうしたらいい?』
陽介は放課後の保健室でゆっくりお茶しながら、仕事を片付ける尚也に聞く。
『…僕に聞かないでよ。』
当然の事ながら冷たくあしらわれる。
『冷てーなー。』
『だって理由知ってるじゃん。だったら受け入れるしかないよ。』
『俺は葵の口から聞きたいんだよ!』
陽介はベッドに横になる。
『なんで好きなのに別れなきゃいけねーんだよ。』
尚也はため息を付いて、白衣のポケットに手を入れ陽介の横に立つ。
『仕方ないじゃん。事情が事情なんだし。…それを覚悟の上で付き合ってたんだから。』
『………。』
無言のまま天井を見つめる。
『それとも、葵ちゃんの行為を無駄にする気?』
冷たい目線で陽介を見ながら言うと、陽介は睨みつけるように尚也を見た。
『んなことしねーよ。』
『だったら、もう割り切ることだね。葵ちゃんだって、現にそうしてるんじゃないの?』
『そうだけど…。こんなはっきりしないまま、終われねーって。』
再び天井に目線を戻して、ため息を付く。
『…いつまでも、そうやってなよ。』
尚也は投げ捨てるように言うと、また仕事に戻った。
葵がとった行動を無駄にはしたくない。
だけど、葵は本当にこれでいいのか?と聞きたかった。
どうしても、もう一度きちんと話をしたかった。
『終わりたくねーよ…。』
陽介の瞳から一筋の線がつたう。
数日後、女子3人はいつものように屋上でお昼をとっていた。
そこに息を切らせた広太が入ってくる。
『どうしたの?そんなに息切らせて。』
瑠美がびっくりしながら言うと、広太は真っ先に葵の元に駆け寄った。
『先生とまた、付き合えるかもしれないぞ!』
『え?……何言ってんの。私はもう付き合う気ないって言ったじゃない。』
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