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『あ~ぁ、次先生の授業か~。』
『やる気ないだろ?』
『はい。とっても。』
『あぁ?』
思わず素がでてしまい、急いでごまかす。
『ぷっ…なんで隠すんですか?別に隠さなくてもいいのに。』
そんな陽介が可笑しく、笑いながら聞くと少し困ったような顔をした。
『お前と同じだよ。仮面を作りすぎて抜けられず仕舞い。いつも直そうと思っても難しくてな。』
その言葉がよくわかる葵は少し親近感を覚えた。
自分も瑠美達の前では素が出せるのに、外や学園へ来ればなんとなく素を見せるのが恥ずかしく、仮面をかぶっているほうがよっぽど楽だったのだ。
葵の場合は家庭環境から問題があったから、気付いた時にはそうなってしまっていた。
『そうなんですか~。』
『西崎も素を出せば?昨日みたいに。そしたらもっとラブレター届くぞ?』
『今はいらないんで別にいいですよ。あ!そうだ。先生、私達隣同士って言ってませんよね!?』
葵は慌てて質問する。
『当たり前だろ?生徒と隣同士なんてバレたら学園中大騒ぎだよ。言ってあるのは山中先生と学園長だけ。あの二人は秘密は守ってくれるからな。』
『ならよかったぁ~。』
ほっとすると予鈴がなったので立ち上げり、出入口へ向かう。
『先生、ありがとうございました。』
葵は笑顔で陽介にお礼を言う。
話しをしただけでものすごく楽になった葵は、表情も明るくなっていた。
『いや。』
それを見た陽介も微笑み短く返信をして別れた。
丁度その頃、報道部が生徒会長に怒られて帰ってきていた。
『まったく、西崎葵め~。俺達のことハメやがって、スゲームカつく。』
『そんな言葉遣いしてるとまた風紀委員に怒られるよ?窪田君。』
『うるせーな。お前達はムカつかないのか?』
窪田誠二。
3年の報道部でかなりの問題児で有名。
その横にいるのが佐々木充、後ろにいるのが黒川将。
二人も同じ報道部であるが、窪田と違って成績優秀で周りからの信頼性もある。
『まぁ腹が立たないわけじゃないけど、今回は僕達が悪いんだし。』
『しばらく大人しくしてるしかないな。しかも俺たちは3年だし、きっと次はないぜ?もしそうなるようなら俺は降りる。』
『将!?』
『将君の言う通り僕にも将来があるからね。じゃあまたね?』
『…なんだよ二人して。』
誠二は仲間外れにされたような気分だった。
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