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誠二は舌打ちをして廊下の壁を蹴っていた。
『あ~、ムカつく…。』
1ヶ月後、教室にいる光は女子に囲まれていた。
『別れたんだって~?でも気にすることないよ、光君かっこいいし。』
『そうだよ。あ!!そうだ今日は思い切ってカラオケ行く?』
女子達は高い声で楽しそうに話すが、光は会話には混ざらなかった。
頭に響く…。
『そういえば西崎さんって、結構男遊び激しいって聞いたわ~。』
『聞いた聞いた~。なんか他の学校の子とか親の知り合いとか。』
『しかも、昔あまりにも激しくて警察沙汰になってるって噂よ?』
バンッ!!
光が机を力いっぱい叩くと、女子達はびっくりして静かになる。
『さっきから、俺の周りでキャーキャーうるせぇんだよ。…今、葵のこと悪く言ったやつ誰だ?』
女子は黙りこんだままだ。
『誰だっつってんだよ!』
怒鳴ると女子は光から、一歩二歩と後退りしていく。
『だ、だって光は別れたんでしょう?じゃあもういいじゃない、過去の女の事なんて。』
一人の女子が言うと、そこに向かって行く。
『俺はあいつが嫌いとは言ってねぇんだけど。ちなみに今の全部噂か本当かどっちだ?』
『え…ぁ、噂よ。』
光は下を向き頭をかきながらため息をつく。
『いいか?今後こんな噂が流れたら、流したヤツも言ったヤツも俺は許さない。女だろうと容赦しねぇ……わかったらもう俺を構うな。』
女子は静かに聞いていた、というより迫力負けして動けないでいた。
それを見た光はまたしても怒鳴る。
『早く失せろ!!』
教室から女子が逃げるようにして出ていった。
『光…お前。』
『徹也、悪い。俺帰るから言って置いて。』
光はかばんを持つと顔も見ないまま帰った。
小針徹也は小学からの付き合いで幼なじみみたいなものだったが、光がここまでキレたのは久々にみた。
光は確かに他の女に手を出した。
悪いのは自分だと思い反省していた。
しかし、すでにもう遅い。
葵とは別れてしまった。
電話、メール全てにおいて拒否。
無くしてから気付く、本当に大切で欲しいものが。
『もう戻れねーんだろうな…。』
携帯を見ながら呟く。
青く晴れた空から降る日差しは、強くなり始めていた。
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