別れ

11/11
前へ
/256ページ
次へ
誠二は舌打ちをして廊下の壁を蹴っていた。 『あ~、ムカつく…。』 1ヶ月後、教室にいる光は女子に囲まれていた。 『別れたんだって~?でも気にすることないよ、光君かっこいいし。』 『そうだよ。あ!!そうだ今日は思い切ってカラオケ行く?』 女子達は高い声で楽しそうに話すが、光は会話には混ざらなかった。 頭に響く…。 『そういえば西崎さんって、結構男遊び激しいって聞いたわ~。』 『聞いた聞いた~。なんか他の学校の子とか親の知り合いとか。』 『しかも、昔あまりにも激しくて警察沙汰になってるって噂よ?』 バンッ!! 光が机を力いっぱい叩くと、女子達はびっくりして静かになる。 『さっきから、俺の周りでキャーキャーうるせぇんだよ。…今、葵のこと悪く言ったやつ誰だ?』 女子は黙りこんだままだ。 『誰だっつってんだよ!』 怒鳴ると女子は光から、一歩二歩と後退りしていく。 『だ、だって光は別れたんでしょう?じゃあもういいじゃない、過去の女の事なんて。』 一人の女子が言うと、そこに向かって行く。 『俺はあいつが嫌いとは言ってねぇんだけど。ちなみに今の全部噂か本当かどっちだ?』 『え…ぁ、噂よ。』 光は下を向き頭をかきながらため息をつく。 『いいか?今後こんな噂が流れたら、流したヤツも言ったヤツも俺は許さない。女だろうと容赦しねぇ……わかったらもう俺を構うな。』 女子は静かに聞いていた、というより迫力負けして動けないでいた。 それを見た光はまたしても怒鳴る。 『早く失せろ!!』 教室から女子が逃げるようにして出ていった。 『光…お前。』 『徹也、悪い。俺帰るから言って置いて。』 光はかばんを持つと顔も見ないまま帰った。 小針徹也は小学からの付き合いで幼なじみみたいなものだったが、光がここまでキレたのは久々にみた。 光は確かに他の女に手を出した。 悪いのは自分だと思い反省していた。 しかし、すでにもう遅い。 葵とは別れてしまった。 電話、メール全てにおいて拒否。 無くしてから気付く、本当に大切で欲しいものが。 『もう戻れねーんだろうな…。』 携帯を見ながら呟く。 青く晴れた空から降る日差しは、強くなり始めていた。
/256ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1793人が本棚に入れています
本棚に追加