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葵と陽介は、ここ最近このようにベランダで話すのが日課になりつつある。
お互い1日の事を話したり、世間話ししたりしていた。
『先生と話してるとホントに飽きないですよね。』
『飽きないって…まぁ楽しいって事だろ?』
『そういう事です。』
葵は陽介と話しているときの顔は常に笑顔だった。
『ずいぶん吹っ切れたんだな。』
え?という顔をする。
『河原との事だよ。』
『あぁ…そりゃもう結構経ちますからね。』
葵は少し下を向く。
『ま、あと5日後には夏休みだし。おもいっきり遊んだらいい。』
聖堂学園はあと5日後で夏休みに入るのだが、葵はそれほど予定が入っていなかった。
春菜と瑠美は家族で海外旅行、広太は避暑地の別荘に行く事になっていて遊ぶ予定がなかったのだ。
葵の両親はもちろん忙しく今は海外にいるとのことで、夏休みは毎年のように一人で過ごしていた。
そのことを伝えると陽介は驚く。
『聖堂学園ってやっぱりすごいな…。』
『そうですか?』
『だって1ヶ月海外旅行とか別荘って…俺にはよくわかんないな。』
葵は苦笑いをする。
確かにわからなくもない。
1ヶ月も海外旅行して何がいいのかと思ってしまう時がある。
『先生は予定ないんですか?』
『俺は…飲み会とかだけかな~。』
『ふーん。』
つまらないような返事をしてタバコを吸う。
『西崎はいつからタバコ吸ってるんだ?』
『…去年から。元カレとかが吸ってたんでその影響で。』
『ふーん…でもやめた方がいいぞ?一応まだ学生だし、体にも良くないし。』
『わかってるんですけどね…。』
遠くに煙を吐き出すと夜景が霧かかって見える。
『悩み事あるからだろ?俺が聞いてやるのに。』
『大丈夫ですよ。今は何にもないですから。』
『ホントか?』
葵の顔をジーと見つめる陽介にたじたじになる。
『ま、まぁ何かあったら言いますよ。その時は宜しくお願いします。』
『よろしい。』
二人は笑い合う。
そして夏休み。
葵は特に何もすることがなく課題をやっていた。するとベランダから声がしたので覗いてみると陽介が何かを運んでいた。
『先生、何やってるんですか?』
『ん~?イスをね、調整してたんだ。ここにあると便利だしな。』
『ふーん…あれ?先生学園は?』
生徒が夏休みでも先生達はまだ仕事があるはず。
『今日は休みで、明日から3日でたら終わり~。』
『へー。』
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