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夏休みに入ってから2人のベランダでのお喋りは毎日のように続いた。
『先生、彼女いないの?』
『いるよ。ソファーにいるプーさん。』
『えー!?』
こんな他愛もないことで笑いあえるのが凄く楽しかった葵。
それは陽介も同じだった。
そんなある日
『明日は来客あるから、話せないんだ。』
『もしかして、彼女とか?』
『だったらどんだけ嬉しいことか。』
陽介はため息混じりで笑う。
『悪いな~。』
『なんで謝るの?気にしてないよ。』
苦笑いしながら葵の頭を撫でる陽介。
本当は葵が毎日、このお喋りが楽しみにしていることぐらい、陽介にもわかっていた。
しかし、それを悟られまいと必死に笑顔で隠すのを見て思わず何もせずにはいられなかったのだ。
『あの~、先生?酔ってるでしょ?』
『え?』
『だってなんか変だし。頭ずっと撫でてるし…。』
『あー、悪い!いや、西崎の髪撫でやすくてつい。』
アハハと笑いながら首をかく陽介。
先生、完全に酔ってるな。
『もう疲れたから私、先に寝ますね?』
『おう。俺も恋人のプーさんと寝よう!じゃあ、西崎またな~。』
『おやすみなさ~い。』
もうヘロヘロじゃん。
こうでもしないと、あのままベランダで寝ることになる陽介を部屋で寝せる為に、葵はわざと部屋に入る。
『まぁ仕方ないか。あの状態だし…。』
タバコに火をつけて、月に向かって吐く。
『明日は雨ならいいのにな~。』
葵の願いは綺麗に晴れた星空に消えていった。
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