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9月に入り過ごしやすい季節になったが、まだ少し夏の陽気を残した中で学園の始業式が始められた。
それぞれ、代表の先生方の話が続く。
それを黙って聞く葵。
葵を黙って見つめる陽介。
2人はあの日以来、全く話す事なく今日を迎えていた。
陽介は尚也から別れた理由を聞いたが、今自分に何が出来るわけではなく下手に行動もとれない。
ただ、じっと耐えているしかなかった。
始業式も無事終わり、生徒がざわめく体育館を出て行く時、尚也が陽介によってきた。
『見過ぎ。』
『え?』
『あんなに見てたら、元カレってバレるよ?』
『え?あー…見てた?』
『隣にいましたから。』
陽介は苦笑いしながら頭をかく。
2人の会話は生徒達の声でかき消される。
『ハイエナの餌食にならないように気を付けてね。』
『はーい。』
尚也はそう言うと、さっさと保健室へ行ってしまった。
陽介は元気のない返事をする。
HRも終わり生徒が下校する時間になったが、葵は屋上で1人座っていた。
別れてから学園に来ることが、こんなにも辛いと思ったのは久々だったからだ。
『明日から…サボろっかなぁ。』
『私もそうしようかしら。』
独り言を空に向かって言うと突然、影の方から声がして驚き声の主が来てさらに驚く。
『春菜!!』
春菜は静かに葵の隣に座り背伸びをする。
『始業式、あんまり長いから肩こっちゃったわ。』
『う、うん…そうだね。』
なんだか気まずくなる葵。
未だに陽介と別れた事を3人に話してない。
何を話そうか考えていると、春菜から話してきた。
『夏休み、あれから何処か出かけたりしたの?』
『…ううん。何処も。』
『また引きこもり~?体に毒よ?』
春菜の笑顔が今の葵にはとても辛かった。
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