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『じゃあ、この話聞いてから考えても遅くないと思うけど?』
広太はなんとか息を落ち着かせると、仕入れてきたばかりの情報を話す。
『亮平がこの前キャンプに行ったのは確かだったんだ。しかも兄貴と。その時、俺と葵の会話を録音してたらしいんだ。』
『ちょっと、それじゃますますヤバいんじゃ…。』
葵にまったをかける。
『そうなんだけど、実はそれが水没してデータが全て消えたらしいんだ。』
『じゃあ証拠はないの?』
春菜の言葉に頷く。
『だから、葵と先生はまた付き合えるんだよ。』
『やったじゃん!葵!』
瑠美がすごく嬉しそうに言うが、葵の顔は曇ったままだ。
『…でも、亮平が諦めたわけでもないし、報道部が停止にも廃止にもなったわけじゃない。彼は必ずそのネタをつかもうとするはずだよ。』
葵の言っていることは正しかった。
証拠がなくなっても、亮平は確かに聞いている。
『こんなにおいしいネタを、こぼすわけにはいかないでしょ。…だから、私はみんながなんと言おうと、よりを戻すつもりはないの。』
『葵の言う通りだけどさー…。』
喜んでいた広太も、残念そうにする。
『ごめんね。せっかくいい情報持ってきてくれたのに。』
苦笑いして謝ると葵は立ち上がり、先に中へ入って行った。
『葵ってば、あんな事言わなくても~。』
瑠美が少し怒りながら言う。
『いや、葵は万が一を考えてるんだ。今回の事がバレたら、どんだけ大事になるのかを想像してるんだろ。だから瑠美もそんなに怒るなって。』
『広太…。』
『そうね。今、一番危なくて辛いのはあの2人だもの。』
春菜が風でなびく髪を耳にかけながら、少し厳しい顔をする。
その頃、亮平は校舎裏で夏樹と話していた。
『せっかくいいネタの証拠つかんだのになぁ。』
『自業自得でしょ。』
『そうだけど。でも、これで終わろうとは思ってないし。』
笑いながら言う亮平をただ黙って見つめる夏樹。
その日の夜、夏樹は姉の弥生と話す。
『またなんかやらかすかもしれないよ?諦めてないし。』
『そう…。』
『まぁ、私はそろそろ手を引こうかと考えてるけどね。』
『もういい頃だものね。あとはこっちの情報がつかめればいいんだけど…。』
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