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『それは山中先生がご存知です。』
『山中先生は学園外での事を知らないだろう。まして、君のご両親はあまり家にいないそうじゃないか。』
『それが何か?』
葵と教頭の言い合いを山中先生と学年主任が、ヒヤヒヤしながら見つめる。
『ご両親がきちんと監視されていない事に、問題があると思うんだが?』
『…それなら、学園内の生徒の約半数が同じ状況だと思いますけど。』
その言葉に少し眉を動かす。
『それでもと言うのであれば、今すぐ呼び出しますので、教頭先生の方からお話ししていただけますか?』
『西崎っ…。』
山中先生が思わず止めに入った。
『私よりも、問題がある生徒が他にもいるんじゃないですか?』
指導室はシンとなり、葵と教頭の睨み合いが続く。
コンコン
突然、指導室のドアが開く。
『失礼します。』
入ってきたのは白衣姿の尚也だった。
『教頭先生、学園長がお呼びです。』
『わかりました。…とりあえず今日は帰りなさい。』
尚也に返事した後、葵にそう告げると指導室を出て行った。
ピリピリしていた空気が一気になくなり、ため息を付く山中先生と学年主任。
『栗本先生には助かりました。…まったく、教頭先生と張り合うなんて度胸あるなー。』
山中先生が苦笑いしながら言う。
尚也も苦笑いした。
葵は未だにむくれている。
『私はただ、言われた事に対して答えたまでです。…先生、やっぱり帰宅?』
『した方がいいな。何かあったらすぐ連絡するから。』
『はーい。それでは失礼します。』
一礼して指導室を出て、教室へ向かう。
教室に戻ると、3人は心配して寄ってきた。
『葵、大丈夫だったか?…まだ、書き込みしたヤツがわからないんだ。』
『焦らなくて大丈夫だよ、広太。とりあえず今日は帰れって言われたから帰るね。』
帰宅の準備をする葵。
クラスメートはざわつきながら4人を見る。
『じゃあ、何かあったら連絡するわね。』
『よろしく、春菜。瑠美、周りがなんと言おうと暴れちゃダメだよ?』
『わ、わかってるよ!』
瑠美の少し焦った反応を見て笑うと、そのまま教室を出て行った。
3人は心配そうに葵の後ろ姿を見送り、顔を合わせて頷き行動にでる。
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