1793人が本棚に入れています
本棚に追加
/256ページ
夕方になり持ち帰る浴衣セットを智彦の家の車に乗せる。
『バタバタしてしまってごめんなさい。次来る時にはゆっくりできると思うから。』
『はい。私はいつでもお待ちしております。』
鈴木の顔をみると、なんとなく寂しくなる。
『じゃ、また。』
『はい。お気をつけて行ってらっしゃいませ。』
葵はその一言に笑顔で行ってきますと言って、智彦と食事に出かけた。
『鈴木さんはいい人だよな~。』
『うん。昔から変わってない。今日どこ行くの?』
『う~ん、何がいいかなぁ?さっぱり?』
葵も悩む。
『あんまりないんだったら、昔よく皆で行った寿司屋にするけど?』
『いいよ。あそこコース料理あるし個室だから。』
『よし、決まりな!』
智彦は運転手に伝えると10分ぐらいで着いた。
モダンな作りのお店に入り個室に誘導される。
ここは二人が小中学生の時に家族でよく来ていた所で、個室がありお寿司などのコース料理があった。
『お久しぶりです、桐生様に西崎様。大きくなられましたね。』
50代半ばの亭主が目尻を下げて挨拶をする。
『そんな堅苦しい挨拶いいよ、おじちゃん。』
智彦は昔からの呼び方で言うと3人とも笑う。
『昔は良くおじちゃんって言って遊んでたよね~。お元気そうで何よりです。』
葵はつい癖で丁寧に挨拶をする。
それを聞き、亭主は笑顔のままため息をつく。
『本当に…大きくなられましたね~。おじちゃんは嬉しいですよ。』
そこの空間だけは昔に帰った時のようだった。
『では、本日コース料理で宜しいですね?』
『うん。期待してるよ。』
『かしこまりました。』
亭主は微笑んだままお辞儀をしてでていく。
『おじちゃん可哀想。智君にプレッシャーかけられて…。』
2人は笑い合う。
『昔、何回も言ったよなぁ~。親父の真似して。』
『カッコつけてね~。』
昔からの付き合いだが久しぶりに話すと話題が尽きることがない。
最初のコメントを投稿しよう!