習慣

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夕方になり持ち帰る浴衣セットを智彦の家の車に乗せる。 『バタバタしてしまってごめんなさい。次来る時にはゆっくりできると思うから。』 『はい。私はいつでもお待ちしております。』 鈴木の顔をみると、なんとなく寂しくなる。 『じゃ、また。』 『はい。お気をつけて行ってらっしゃいませ。』 葵はその一言に笑顔で行ってきますと言って、智彦と食事に出かけた。 『鈴木さんはいい人だよな~。』 『うん。昔から変わってない。今日どこ行くの?』 『う~ん、何がいいかなぁ?さっぱり?』 葵も悩む。 『あんまりないんだったら、昔よく皆で行った寿司屋にするけど?』 『いいよ。あそこコース料理あるし個室だから。』 『よし、決まりな!』 智彦は運転手に伝えると10分ぐらいで着いた。 モダンな作りのお店に入り個室に誘導される。 ここは二人が小中学生の時に家族でよく来ていた所で、個室がありお寿司などのコース料理があった。 『お久しぶりです、桐生様に西崎様。大きくなられましたね。』 50代半ばの亭主が目尻を下げて挨拶をする。 『そんな堅苦しい挨拶いいよ、おじちゃん。』 智彦は昔からの呼び方で言うと3人とも笑う。 『昔は良くおじちゃんって言って遊んでたよね~。お元気そうで何よりです。』 葵はつい癖で丁寧に挨拶をする。 それを聞き、亭主は笑顔のままため息をつく。 『本当に…大きくなられましたね~。おじちゃんは嬉しいですよ。』 そこの空間だけは昔に帰った時のようだった。 『では、本日コース料理で宜しいですね?』 『うん。期待してるよ。』 『かしこまりました。』 亭主は微笑んだままお辞儀をしてでていく。 『おじちゃん可哀想。智君にプレッシャーかけられて…。』 2人は笑い合う。 『昔、何回も言ったよなぁ~。親父の真似して。』 『カッコつけてね~。』 昔からの付き合いだが久しぶりに話すと話題が尽きることがない。
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