習慣

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食前酒が注がれ、一口飲む。 白ワインで凄く軽いものだが、香りはばっちりだ。 『でも、お酒はこれだけな?ここ最近学園でも問題出てて先生方が動いてるから。』 『ふーん。』 智彦といると学園の情報が沢山入ってくる。 『葵は彼氏できたのか?』 『う―ん、なんかしばらくはいいかなぁって思って…。』 背もたれに背中をつけ下を向く。 『まだ引きずってるのか?』 『別に光のことを引きずってる訳じゃなくて、光がやった事に対してちょっと。』 『浮気か。』 智彦も同じ体制をとるが、腕を組み顔は葵を見ている。 『確かに一度そうなると、次付き合うとき不安だよなぁ。』 『まぁ、こんなことすぐ忘れるよ。』 苦笑いの葵は少し無理をしているように見えた。 『失礼します。』 フロアー係の男性が前菜を持ってきた。 これを気に、この話題は消えて楽しい話に変わった。 中学の時の話に学園での話、両親のことや友達のことなど様々だった。 智彦は葵がトイレに立った時に時計を見ると9時を回っていた。 ずいぶんと話したなぁ。 席に戻ってきた葵に、そろそろ帰ることを言う。 『じゃあ吸っていい?』 『あれほどやめとけって言ったのに。』 『うん…。でもそのうちやめるよ。』 火を着けようとしたとき、智彦はその動きをセーブさせた。 『なに?』 『早くしまえ。』 葵は驚きながら急いでバックにしまうと亭主が入ってきた。 『そろそろ、お帰りですか?』 『うん。もう遅いし、葵を家に届けなきゃいけないからね。』 『そうですか。お口に合いましたか?』 『スッゴい美味しかったよ!!また来るね、おじちゃん。』 葵の一言に2人は笑顔になる。 会計を済ませ車に乗り、家に向かう。 『おじちゃんの中の印象を崩しちゃいけないだろ?車なら平気だから。』 『そうだね。ありがとう智君。』 葵は反省しながらもお礼を言い、タバコに火を着け窓を少し開ける。 『今日は本当に楽しかった~。また行こうね!』 『そうだな。』 2人の表情はとても明るかった。 マンションに着き、荷物を受け取る。 『ごめんね、送ってもらって。』 『いや、近いし。それより葵、なんかあったら言えよ?話しぐらいは聞くから。』 『ありがとね、智君。』 葵は智彦が兄みたいな感じで凄く嬉しかった。 『じゃあ、またな。』 『うん、またね。』 智彦の乗った車が見えなくなるのを確認してマンションへ入る。
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