確信

10/11

1793人が本棚に入れています
本棚に追加
/256ページ
『先生…。』 『無理なのはわかってる。でも、考えてくれないか?』 『そんな…。』 下を向く。 『花火大会…その日の夜。返事待ってるから。』 そう言うと部屋に入ってしまう陽介。 『あ!先生!!』 その場にたちつくす葵には、月明かりがスポットライトのようにあたっていた。 そして、花火大会当日。 葵はそれまで勉強、読書、テレビ…色んなことをしても集中できず、ずっと考えていた。 考えれば考える度に、胸が苦しくなった。 夜になり、今夜も月明かりが眩しいぐらい綺麗に晴れていて絶好の花火日和。 ベランダに出て椅子に座り陽介を待つ。 葵の気持ちは決まっていた。 花火が始まってすぐに、ベランダに出てきた陽介。 どうやら風呂に入っていたらしく髪が濡れていた。 『悪い、風呂入ってた。…今日暑かったよな~。』 『うん、かなりね。』 どことなくぎこちない2人は、黙って花火を見ていた。 今回は場所が少し遠いが、十分綺麗に見える。 花火の音が響く中、口を開いたのは葵だった。 『あれからずっと考えてたの。…先生とは一線を越えちゃいけない関係なんだって。でも…』 ドン!!…ドンドンッ!! 大きな音が葵の言葉を飲み込む。 『悪い、よく聞こえない。』 花火は切れそうにないため、葵は少し声を大きくして言う。 『でも!私も先生とは、一緒にいたいと思ったの!!』 鮮やかな花火は一旦止まった。 『毎日ここで、こうやって話してるのが凄く楽しくて。』 陽介は下を向いている葵を見たまま黙っている。 『…私、』 あと一歩のところで、またしても邪魔に入る花火に、葵は苦笑いして立ち上がり陽介に手招きする。 陽介は葵の方に顔を近づけると、 『私も先生のことが大好きだよ。』 そう耳元で言われた。 陽介は葵を見ると恥ずかしそうに下を向いている。 フラレると思っていたが、思いもよらない返事がきて嬉しくなり抱きしめる。 『ちょっと!先生!?』 身動きが取れないほどきつく抱きしめる。 しばらくして腕の力を緩めるがそのままの状態で話しだす。
/256ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1793人が本棚に入れています
本棚に追加