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『…電話とかうるさくて切ったんだった。』
起きて10分後に発した一言がこれだった。
二人は呆れてため息をつく。
散らかっていたリビングも春菜が適当に片付けたため綺麗になっていた。
『これ飲んで落ち着きなさい。酷い顔よ?』
『ありがとう春菜。』
春菜は紅茶を人数分入れ渡し、葵には冷えたタオルも渡す。
『そんなになるまで、いったい何があったの?先生もすごい心配してたよ?』
葵はゆっくりと光との事を話す。
『…そうだったの。でも、私達に言ってくれればよかったのに。愚痴でもなんでも聞くって言ったじゃない。』
春菜は話しを聞いて辛い表情をしながらそう言う。
『ごめんね…。』
しばらく沈黙が流れる。
こんなになった葵を見るのは初めての2人。
何を言っていいのかわからなかった。
『そいや広太は?』
『授業うけてから来るよ。もう終わったし、来るんじゃないかな?』
瑠美が言い終わると同時にインターホンが鳴る。
『管理人さんからだ…。』
モニターの受話器をとると広太が来ている。
『はい。』
「西崎様、ご友人がいらっしゃってます。」
『通していただいて大丈夫です。…先ほどはご迷惑おかけしてすみませんでした。』
「いえ、大丈夫ですよ。ではお通しいたします。」
受話器を置く。
5分もしないうちにチャイムが鳴り、玄関を開けると心配した顔の広太がいる。
『大丈夫?』
『うん、心配かけてごめんね。…入って。』
広太は促されて入ると二人がお茶を飲んでいた。
『お疲れさま。お土産持ってきてくれた?』
『まったく人使い荒いよなぁ~。…はい。』
瑠美の言葉にため息をつきながらテーブルの上にケーキが入っている箱を置く。
『さすが広太。あなたの可愛い顔にパティシエさんも特別ケーキを出してくれたわ。』
春菜の言葉にどうだかといった目線で返す。
広太が買ってきた(頼まれた)ケーキは、パティシエが気に入った人しか出さない特別ケーキがあるお店なのだ。
広太は家繋がりでそこのお店とは仲良くしていたのだ。
『広太も紅茶でいい?』
『うん。ありがとう。』
紅茶を飲んで一息ついた広太は質問をする。
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